守りたい生命プロジェクト 地球環境調査隊

年に1回程度、地球のなかで特に注目される自然環境を有する場所へ、寺沢孝毅と数名の調査隊を派遣します。その地域で起きていることや自然の状況を可能な限り記録し、報告会を開きます。

Vol.1 「こんちき号北極探検隊」 ノルウェースバールバル諸島 2011.6〜7
Vol.2 「タビン野生生物保護区コアエリア 原生のジャングル探検」 マレーシア 2011.11
Vol.3 「最後の氷河期の風景が残るアルセック川を下る」 カナダ ユーコン準州 2012.6
Vol.4 「さまよえる流氷にアザラシの赤ちゃんを追え! 知床の今」 北海道知床半島 2013.1〜3
Vol.5 「アフリカ大陸ついに初上陸 奇跡の野生の王国」 ケニア・タンザニア 2013.5
Vol.6 「地球最後の秘境 南米ギアナ高地の奇跡のテーブルマウンテン」 ベネズエラ 2013.7
Vol.7 「『大地』と『海』が出会う荘厳なる儀式を見た!」 北海道知床半島 2013.8〜11
Vol.8 「ボルネオゾウの収容はいつ? 『ボルネオへの恩返し』のいま」 マレーシア 2013.12
Vol.9 「ザトウクジラが繁殖する海」 小笠原諸島 父島 2014.4
Vol.10 「流氷が生み出した植物プランクトンがシャチを呼ぶ」 北海道知床半島 2014.4〜6

守りたい生命プロジェクト地球環境調査隊 Vol.4

「さまよえる流氷 知床のいま」

2005年が最後となったアザラシの赤ちゃんとの出会い。果たして2013年は?

■知床半島ウトロに流氷接岸は1月15日
 冬の知床を、追いかけることにしました。2004年に多くのアザラシの赤ちゃんと3〜4月初旬に出会い、2005年にもかろうじて出会えたものの、翌年から流氷の状況が悪くてまったくそうした状況が消えたのです。2013年の春、8年ぶりの再会に挑戦しつつ、北海道オホーツク海のいまをレポートしようと思い立ったのです。「まずはロケハンを……」と知床半島の斜里町ウトロに乗り込んだのは1月13日でした。
 この12月から1月初旬にかけて、北海道はとてつもない寒波に見舞われ、最初は遅れていたオホーツク海の流氷の発達も、その頃にはほぼ平年近くに戻っていました。そして、北寄りの風が吹き続くなか、15日午前には思いがけない流氷の先発隊が迫って来たのです。
 私は、波打ち際に降りて、到着の瞬間を待ちました。海水が白く濁って粘りがあるように見えるのは、海水温が0度ぐらいに下がってシャーベット状になっているせいです。この状態を「氷泥」といい、凍りつく手前です。やがて、正午には流氷接岸のときを迎えました。
■知床半島ウトロに流氷接岸
 私は、以前に見た流氷接岸のハプニングを思い出し、そのときの模様が再現されるのではと、氷の帯に押されて岸に寄せられる海鳥たちに注目していました。
 そこにいたのはヒメウ、ケイマフリ、シノリガモなどの鳥で、潜水しながら餌を捕っていました。そのうち、目の前に迫る陸地に気づいた鳥から、沖へ逃れるように飛び立っていきました。ところが、それに気を留めず潜水していたヒメウに、オオワシやオジロワシが攻撃をしかけたのです。舞い上がるために助走が必要なヒメウは、慌てて水面を走るのですが、周囲の流氷が邪魔で氷上に乗り上げて動けなくなったのです。あとはワシたちの思うままでした。ワシたちは、この状況になるのを知っていて待っていたと思えてなりません。同じ光景が、同時に数カ所で見られたのですから……。
■4月下旬にBS朝日で放送予定
 3月いっぱいまで、勇壮な海ワシの姿もさることながら、初春の氷上で出産するアザラシの姿を追いかける予定です。うまく出会えるかどうかは、すべてが流氷の状況にかかっています。この先どんなハプニングが起きるか注目です。

守りたい生命プロジェクト地球環境調査隊 Vol.3

最後の氷河期の風景が残るアルセック川を下る

カナダユーコン準州から南東アラスカグレイシャーベイへ至る秘境

まるで氷河期の最中であるような錯覚に陥るほどの流れ込む氷河。川を下れば下るほど、有利に閉ざされた風景が支配し、気温も水温も下がっていくという信じられない現象。そんな場所が地球で1カ所だけ残っていたのです。カナダユーコン準州を源とし、南東アラスカのグレイシャーベイへ流れ出るアルセック川。2012年6月中旬からこの川をゴムボートで下りながらグリズリー、ブラックベアー、マウンテンゴード、オオカミや、青い色をしたとても貴重なグレイシャーベアの気配を探りまました。このときの模様は8月12日(日)夜、BS朝日で2時間にわたり放送されました。

日本の寒さを支配する北極の寒さ。絶妙な多様性の崩壊がはじまっている!!!

「こんちき号北極探検隊」Svalbard private boat expedition

ホッキョクグマの聖地を行く28日間(2011.6.19〜7.17)がテレビ番組化!

フィヨルドの海をゆく長さ20メートルのヨットがベースキャンプ。6〜7月のスバールバル諸島は、接岸していた流氷が融けて海が開ける時期です。28日間という長期にわたる探検調査は、海さえ開けば、北東に浮かぶクビト島の諸島最大のセイウチコロニーを訪れることを可能にします。探検の成果を担保するための必要な時間を確保し、海氷の状況やホッキョクグマを頂点とする生態系のいまを、可能な限り調査・記録します。

 ここ10年で激変するともいわれる北極の海氷。2007年9月に史上最小面積を記録し、その後やや戻ったものの海面上昇や気候変動など地球規模の異変が懸念されます。北極の寒さは日本の気候にも直接影響し、オホーツク海の流氷も縮小傾向です。はたして北極では何が起きていたのでしょうか。

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